心理・メンタルケア

社会復帰はひとりじゃない――脳梗塞発症からリハビリ病院転院まで、家族と歩んだ再出発の記録

【体験談スタート】
50代になってまもないある朝、突然右手に力が入らなくなり、家族の電話で気付き入院しました。病院のベッドで私は、“普通”がどれほど貴重だったかを痛感しました。主治医から「回復は順調ですが再発リスクを考えて今後を検討しましょう」と言われ、焦りと希望が入り混じる日々が始まりました。

「もう退院できますよ」の医師の声と、「本当に家に戻れるのか」という自問。相談した医療ソーシャルワーカーからは“焦らず長い視点で回復を”と提案されました。自宅が恋しい一方、買い物、料理、運転免許書の許可――日常復帰の自信はまだありませんでした。

悩みつつも、家族と何度も話し合うことで、まずリハビリに専念する道を選ぶ決断に至りました。自宅に戻る喜びよりも、再発防止と確実な回復を優先した判断でした。脳梗塞は突然発症し、生活に大きな影響を与える病気です。

治療後も麻痺や言語の不自由さが残ることがあり、退院後の生活に不安を感じる方も少なくありません。私自身も同じように不安を抱えましたが、リハビリ病院への転院が社会復帰への大切な一歩になると考えました。

本記事では、私が急性期病院からリハビリ病院へ転院した際の流れや準備、リハビリ病院での日常、家族の支えについて体験をもとに詳しくお伝えします。

退院か転院かの選択

医師からの説明

退院が近づいたころ、医療ソーシャルワーカーから「退院か転院かを検討してください」と伝えられました。

転院すればリハビリ環境は整いますが、入院期間が数か月に及ぶこともあると聞き、正直なところ迷いがありました。家に帰りたい気持ちと、体をもう少し鍛えたいという思いの間で揺れました。

退院後の準備と不安

退院が近づくにつれ、我が家に戻れる喜びと日常生活への不安が少しずつ出てきました。買い物や家事、以前は当たり前だったことができるかどうか。医師や療法士と相談しながら、退院後の生活設計を立てることで、不安が募っていったことが今後を決めることの一部分となりました。

家族との相談

再発リスクや運転免許書の許可取り、生活動作への不安がありました。妻は「また倒れたら…」と不安そうでしたが、「大丈夫、一緒に乗り越えよう」と声を掛けてくれました。

家族の優しさ“がんばって”の言葉が何度も力になりました。転院に向けて相談した友人からは「今だけは自分を大事にしよう」と励まされました。身近な人たちの温かさが、目の前の不安に立ち向かう力になったのです。――そんな言葉に背中を押され、私は転院を決意しました。

転院準備と病院選び

病院候補の紹介

転院先を選ぶ際は、通院距離、面会しやすさ、病院の雰囲気など、実生活に即した視点で比較しました。最終的には家族が通いやすく費用面も含め大部屋を選択。病院候補で迷うなか、幸運にも希望の病院で大部屋が空き、転院が決まりました。ベッドに寝転びながら、ここからまたスタートできると静かに胸が震えました。

病室タイプの検討

個室はプライベートが確保され快適そうでしたが、長期入院を考えると費用面で難しいと感じました。最終的に、他の患者さんと交流ができる大部屋を選択しました。

転移先リハビリ病院決定

候補として挙げていた最初の病院は、個室しか空いていなく諦めました。次に候補にしていた病院も個室しか空いていなく、遠方のリハビリ病院へ転院先となることを覚悟していたのですが、急遽大部屋のベットが空きますと連絡が入り転院先が決まりました。

専門病院退院直前の学び

退院前の会話

退院前日、同室の3人が同じ日に退院することが決まり、初めてゆっくり会話をしました。
入院に至った経緯や現在の体調、今後の目標について話す機会がありました。「もう二度とここで会わないように、再発しない生活を送りましょう」と互いに励まし合いました。

病気を経験した者同士の言葉には、深い重みがありました。退院日にはリハビリもなく初めてゆっくりと話す機会に恵まれ、再発しないためにも今後の生活を気を付ける事を誓い合いました。それぞれが前向きに努力している姿に励まされました。

健康への意識

脳梗塞は突然の発症や再発することも多く、日頃の健康管理の大切さを改めて実感しました。食事・運動・睡眠といった基本的な生活習慣を整えることが、再発予防につながると感じています。

転院当日の流れ

転院の手続き

転院当日は、紹介状と診療情報を受け取り、妻の運転で新しい病院へ向かいました。
久しぶりに夫婦で過ごす車内で、「きっと元の生活に戻れる」と励まされ、胸が熱くなったのを覚えています。

自家用車での転院は、体調の安定を優先してスケジュールが慎重に組まれました。途中での寄り道は避け、移動中の体調変化に備えるための配慮がなされていました。転院先では改めて入院説明と診療を受け、生活の流れやルールを確認しました。

病棟の第一印象

大部屋は4人での生活。最初は不安もありましたが、同じ病気を経験している仲間がいることで、安心感を持てました。

リハビリ病院での生活

1日のスケジュール

リハビリ病院での生活は想像以上に規則正しく、朝・昼・夕とスケジュールが組まれていました。午前は歩行練習、午後は作業療法。

空いた時間はベットの上で専門病院でも行っていた自主リハビリに、持ち込んだパソコンで動きが鈍い指を使い調べ物や仕事のメール対応などをして、リハビリ以外でも脳を動かす習慣を持ちました。

食事と健康管理

食病院の食事は減塩・低脂質・栄養バランス重視で、最初は味気なく感じました。しかし次第に、「これが体を守る味なんだ」と思えるようになりました。同室の方々とおかずの違いを見比べ、自分の食事制限が病状に合わせて調整されていることを知り、生活習慣の見直しを痛感しました。

食事中も早食い習慣を抑制することが大事ですと促されました。健康を維持するためにもゆっくりと食事をすることを心掛けるなど食事内容と食事の仕方が大切だと学びました。

周りの方と違うおかず

専門病院では、自分のベット上での食事でしたのでわからなかったのですが、ここでは、同室の方と同じテーブルでの食事となります。そこで初めて他の方と異なるメニューが提供されていることに気づき、改めて自分の病状や生活習慣の影響を実感しました。

食事内容の違いが、健康管理の重要性を教えてくれました。脳梗塞の原因が、高血圧と糖尿病が原因だということを改めて認識しました。専門病院で原因を聞いていたのですが、自覚できていなかったために周りの方と食事の内容が違うことで驚き自覚し、今までの生活を反省しました。

転院後に感じた変化

転院してから数日が経過すると、生活リズムにも慣れ始め、リハビリへの集中力も高まりました。特に朝のリハビリ前に軽いストレッチを行うことで、身体の動きがスムーズになる感覚がありました。病院スタッフの声かけや、同室の仲間との会話が、精神的な支えにもなりました。

リハビリ内容

理学療法

理学療法では、歩く距離を少しずつ伸ばすことや筋力強化を中心とした目標に据えました。最初のころは数10メートルで息が上がりましたが、1週間後には廊下を何往復も歩けるようになりました。続けるうちに徐々に回復を実感できました。

作業療法

日常生活に直結する動作、着替えや指先の細かな動き練習など行いました。指先の動きを取り戻すために小さなピンを掴む練習を繰り返しました。指先の動きは時間がかかりましたが、「昨日より少し動いた」と感じられる瞬間が、何よりの励みでした。毎日の積み重ねが効果を生みました。

マッサージと柔軟訓練

固くなった部位を少しずつ動かすためのマッサージもありました。最初は違和感を覚えることもありましたが、徐々に関節の動きが改善されていく感覚があり、リハビリの効果を実感できました。

大部屋での体験

仲間との交流

同じようにリハビリをしている方々と、食事では同室の方々と同じテーブルで食事をするため徐々に話す機会が多くなりました。同室の仲間とは、毎日のようにお互いの回復を喜び合いました。


「今日は階段を一段登れた」「腕が少し上がった」――そんな小さな報告が、みんなのモチベーションを支えていました。不便もありますが、お互いの努力を励まし合うことが孤独ではないという安心感に繋がり大きな支えになりました。

生活上の工夫

夜中に物音で目が覚めることもありましたが、耳栓を使うなど工夫し、少しずつ慣れていきました。大部屋生活は不便もありますが、他の患者さんとの交流によるメリットも大きいと感じました。

まとめ

脳梗塞治療後にリハビリ病院へ転院した経験は、私にとって“第二のスタートライン”でした。
退院か転院かで迷った時間も、今では自分を見つめ直す大切な期間だったと思います。
焦らず、一歩ずつ進むことが回復への近道だと感じています。

不安を抱えながらのスタートでしたが、リハビリの継続と周囲の支えによって、少しずつ前向きな気持ちを取り戻すことができました。転院は、社会復帰への大切な一歩だったと感じています。同じく脳梗塞後の生活に不安を感じている方にとって、私の体験が少しでも参考になれば幸いです。

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