治療と医療体験

【体験談】脳梗塞の初期サインと迅速な対応|命を守った私の体験記

治療と医療体験
ある日の午後、仕事中に突然「左手から携帯が落ちる」という異変が起きました。

この記事では、私が体験した脳梗塞の初期症状、病院に行くまでの判断、そして治療開始までのリアルな流れをお伝えします。

同じ症状が自分や家族に起きたときに、すぐ行動できる人を一人でも増やすために書きました。

脳梗塞の初期症状に気づいた瞬間

12月下旬、街全体が年末の慌ただしさに包まれていたころ。私も仕事納めに向けて机に向かっていましたが、いつも通りの午後が突如として大きく変わることになりました。その日が人生を分ける出来事の幕開けとなったのです。

左半身に異常な冷感としびれ左半身の冷感と麻痺

昼過ぎ、突然左半身が氷水をかけられたように冷たくなり、指先がじわじわしびれていきました。普段と違う感覚に「何かがおかしい」と直感しました。

机に向かって作業するうちにいつの間にか眠ってしまい、14時過ぎ着信音で目が覚めました。
携帯に手を伸ばした瞬間、左手から落下。拾ってもまた落ちる。さらに指先がじわじわしびれていきました。何度試しても握力が入らず、胸の奥に「ただごとではない」と冷たい緊張が走りました。

携帯電話が持てない異常と病院検索

かろうじて右手に持ち直し電話に出ると、相手は弟でした。「左手が動かない」と伝えると、弟はすぐに「救急車を呼べ!」と促しました。しかし私の頭の中には、「脳梗塞かもしれない。

ならば脳神経専門病院に行かなければ」という思い込みが強く、救急要請ではなく右手で必死に検索を開始しました。左指先から感覚がだんだんと無くなっていくことが気になり、画面操作が遅れる。その焦りと冷静さが交錯していました。

病院へ向かうまでの葛藤と決断

連絡

病院へ連絡すると「本日16時までに来てください」と告げられたのが15時頃。絶望的に短い時間の中で、不思議と冷静な自分がいました。幸運にたまたま父が近くまで来ていたため、そのまま車で送ってもらうことに。

しかし病院までの距離と残り時間を思うと、頭の中は「間に合うのか」という緊張でいっぱいでした。

間に合わない

車に乗り込むとき、すでに左足はまともに動かず引きずる状態になっていました。助手席に滑り込みながら「もう始まっている」と改めて実感。

父に「高速で行ってほしい」と頼みましたが、高齢のため数年間高速を運転しておらず、不安があるとの返事。一般道なら渋滞時間切れ、命にかかわる。この時「どうするか」極限の選択を迫られました。

迷いと焦りの中での判断

一般道で行けば確実に遅れる。救急車を呼べば到着までの待機時間が読めない。残された選択肢は自分が運転し高速を使うこと。

しかし、麻痺が悪化していく最中にハンドルを握るのは命がけの行為。時計をにらみながら、「このままでは治療のチャンスを逃す」という焦りが、自分を危険な方向へ突き動かしていました。
※危険行為なので「推奨される行動は救急要請です」

高速道路で病院へ向かう決断

「時間に間に合わせるか」「安全を選ぶか」究極の二択に直面しました。リスクは理解していました。それでも私は「一刻でも早く診療を受けたい」と考え、自分でハンドルを握り高速に乗る選択をしました。

危険と隣り合わせの決断でしたが、脳梗塞は早い処置ほど後遺症が少なく済むという知識が背中を押していたのです。

記憶

この時ふと、数年前に友人から聞いた「知人が脳卒中で倒れ、時間が勝負だった」という話がフラッシュバックしました。

さらに以前調べた「脳梗塞の治療は発症から数時間以内に始めるべき」という情報が脳裏をよぎり、「今すぐ行かなけば」という執念に変わっていました。

到着

高速入口手前で父と運転を交代し、必死に病院を目指しました。渋滞もありましたが、奇跡的に診療時間ぎりぎりで受付に滑り込みました。

この時には、左足の麻痺は顕著で、歩くのは困難。左腕は握ったまま固まり口元からは言葉がもつれる。急速に進行する状態に、「間に合ってほしい」と祈るしかありませんでした。

検査と診断の結果

コロナ検査と待機時間

受付後すぐに車いすが用意されました、当時の私は「歩けるし、少し大げさでは?」とまだ現状を理解しきれていませんでした。

しかしコロナ禍の受診では、まずコロナ検査が必須。陰性の結果を待つ数十分の間にも、麻痺は進行し、口元からよだれが垂れ、ろれつが回らない受け答えしかできなくなっていました。時間の残酷さを身をもって感じた瞬間でした。

CT・MRIなどの検査

いざ検査が始まるとCTやMRIの検査機器の中で「もう元には戻れないのでは」という強烈な恐怖が押し寄せました。

その後は意識が遠のくようにぼんやりしていて、記憶が曖昧です。頭の中は「この先どうなるのか」という言葉だけが繰り返され、出口のない不安に押し込められていました。

診断

検査を終えた後、医師から下された診断は脳梗塞。「このまま即入院です」冷静に告げられました。私はつい「自分で運転してきました」と伝えましたが、その瞬間、医師の表情は険しくなり「非常に危険な行為です」と厳しい言葉を受けました。

確かに、進行中の脳梗塞で運転するのは命がけ。その指摘に反論する余地はなく、ただ深くうなずくしかありませんでした。

※この記事は私の体験談です。発症時は救急車を呼ぶのが推奨される行動です。同じ症状が出た場合は、迷わず119番してください。

前兆

脳梗塞は突然倒れるケースが多い一方で、実は「小さなサイン」が現れていることも少なくありません。例えば、片側の手足がしびれる、言葉がもつれる、片目がかすむ、顔の片方が下がる、さらには、強い頭痛やめまい、しゃっくり、耳鳴りなど一見些細に思える症状です。

私自身も左手で携帯を持てなかったことが前兆だったわけです。一時的に改善しても、「大丈夫」と油断せず、すぐ医療機関へ行くことが命にも後遺症にも直結します。

検査・治療の開始

検査の結果に基づき、すぐに治療が開始されました。医師から説明されたのは、血栓を溶かすために行う点滴治療。それは、発症から数時間以内にしか使えない”時間制限のある薬”でした。

さらに症状や状態に応じ、抗血小板薬、抗凝固薬、脳の保護を目的とした治療が追加されていきます。どの治療も「一刻も早く行うことほど効果が高い」という現実。

ベットに横たわりながら「遅れていたら間に合わなかったかもしれない」と想像し恐怖と安堵が入り混じりました。

主な点滴薬と使用タイミング

t-PA「血栓を溶かすために使われる薬剤で、脳梗塞の初期治療に用いられます」

治療薬の中でも特に重要なのは、「t-PA」という血栓溶解剤です。脳梗塞で詰まった血流を再開させる効果がありますが、使えるのは「発症後4.5時間以内」に限られます。

つまり、受診が遅れれば投薬すらできず、後遺症が重く残る可能性が高いのです。日本では出血のリスクを考慮して低めの量が使われることもあります。私自身もこの投薬を受けることができたことで、「時間と戦い」文字を打てているのだと強く実感しています。

「参考リンク」日本脳卒中学会 rt-PA静注療法 補足資料(PDF)

「点滴が効いていないと感じるとき」の対応

点滴を受けてもすぐに改善が見られないことも多いと、医師から説明を受けました。「効いていない」というよりも「これ以上の悪化を防いでいる」治療だということです。

実際、目に見える変化がなくても時間をかけて安全に効果を発揮することが多くあります。追加で血管内治療が検討されるケースもあり、とにかくt-PAが検討された場合には、「まずはt-PAを打つこと」が現在の推奨されています。

まとめ

初期症状と異変の気づき

  • 左半身が「氷のように冷たい」と感じた違和感
  • 左手が動かず、携帯電話を落としてしまう
  • 冷静に「脳梗塞かもしれない」と判断し、専門病院を検索

病院へ向かうまでの葛藤と決断

  • 父の運転では間に合わない可能性
  • 救急車を呼ぶか、自分で運転するかの選択
  • 高速道路を使い、診療時間ギリギリに病院到着

検査・診断・治療の開始

  • CT・MRIなどの検査
  • t-PA点滴による血栓溶解治療(発症から6時間以内)

前兆と注意すべき症状

  • 片側のしびれ・脱力・ろれつが回らない
  • 視覚障害・顔のゆがみ・耳鳴り・めまいなど
  • 私が一番伝えたいのは、「様子見が一番危険」だということです。
    片側のしびれ、ろれつが回らないなど少しでも違和感があれば、迷わず119番通報してください。行動の早さが、命と未来を左右します。
  • 私が携帯を落としたあの瞬間に「少し休めば治る」と判断していれば、今こうして書いていなかったかもしれません。
  • 脳梗塞は時間との勝負であり、ごくわずかな前兆を逃がさず、行動に移せるかどうかでその後の人生が決まります。この体験が、誰かの命を守る一助となれば幸いです。

読者が取るべき行動

  • 片側の手足がしびれる、言葉が出にくいときはすぐに119番
  • 発症から4.5時間以内がt-PA投与のタイムリミット
  • 家族とも緊急時の連絡方法を決めておくと安心

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